広東語の先生との交流

香港に赴任してからほどなく、広東語を習い始めました。

先生は香港人の女性で、誠実な人柄と褒めながら教えるスタイルが心地よく、習い続けてもう2年半になります。

 

マンツーマンなので、内容は割と自由です。テキストはありますが、開くのは1時間授業の残り20分くらいで、それまでは雑談をしては広東語に訳すのを繰り返しています。

 

広東語を習い続けていて何ですが、かなり早い段階で習得は諦めています。

そもそも語学の才能が無い上に難しいですし、目的も簡単な挨拶や数字が分かりたいくらいでしたので。

なので、同じ先生から英語も追加して習うようにしました。

こちらは今後のキャリアにも関わるので、今からでも少しは上達しないとまずいです。

(幼稚園から10年英語を習っている娘に「発音やばいやろ」と笑われる)

 

先生は、名門香港中文大学を卒業し、英語、日本語がとても堪能です。

 

なお香港は大学の数が少なく、子供達は過酷な受験勉強を強いられます。

(どの大学もアジアのランキングに入る一流)

香港の教育は胎内から始まるとも言われており、大量の宿題をこなし、激しい競争を勝ち抜いた子だけが香港の大学に進みます。

ダメだった子は、そうした大学に聴講生という形で入学してランクの落ちた学位を得たり、海外の大学に進みます。なので入社面接で履歴書を見ても、学歴が分かりづらいです。

 

この先生との授業の何が良いかというと、高等教育を受けて真面目に働く香港人の意見に触れられることです。

特にここ1年、反政府デモ、新型コロナ、国安法と香港の歴史の中で転換点になる重要なイベントが続いています。

偶然なのかこれらに対する考え方が先生と似ているので、かなり深い話ができ、メディアに表れづらい香港人の本音を確認できます。

(突っ込んだ話題は広東語の授業では無理なので、英語の授業で必死に話しています)

 

先生は日本に留学してたため、日本人の友人が多いです。

最近、友人から香港情勢を深刻に心配するメッセージが届くようです。

 

日本の報道で情報を入手し、香港の友人を心配する内容で悪気は一切ないのですが、そこで生活する人からすると、少し違和感を覚えるものになっています。

こうしたメッセージへの返信に困る先生は、当たり障りないお礼をしています。

 

私の偏った考えとしては、

  • 日本のマスメディアは基本的に親米であり、自由と民主主義を至上の価値観としている。
  • これは現在の社会体制が、戦後アメリカによって構築されたことが強く影響している。(例えば、日テレとCIAの密接な関係)
  • よって、民主主義の推進と相反する香港への政策はすべてネガティブに報道される
  • 日本人は概ねこの価値観を共有しており、メディアからの情報を素直に受容している。

これが感覚の相違の原因となっていると思います。個人的には、

  • 国、地域それぞれに歴史的経緯を抱えており、自分の価値観が絶対と思うことは避けた方がよい。
  • 特に、他国の人と接する際は、このことを強く意識する必要がある。
  • 「無知の知」に尽きる。

 

先生は、価値観の違いへの意識について特に納得して下さったようで、お互いにとって非常に有意義で素晴らしい時間でした。今回の日記は、その備忘録です。

 

なお「無知の知」の英訳は、" I know that I know nothing. "