2020年6月15日時点の香港

香港情勢のアップデートをしたいと思います。

 

こちらに暮らして感じるリアルと、世界で報道されているギャップに無力さを感じる場面もありますが、一応記しておきたいと思います。

 

【デモについて】

 昨年の勢いは完全に失われました。

 新型コロナで集会が禁止されているため、デモそのものが取り締まりの対象となる不利を抱えています。

 それでも昨年なら、大勢が街に繰り出して抗議活動を行っていたのが、そうした機運を感じません。

 5月22日に、全人代で電撃的に発表された「香港国家安全法」は、昨年の「逃亡反送条令」よりも香港の根幹にかかわる法令ですが、その週末のデモは1万人規模に留まりました。

 一方、警察の取り締まりはより厳格になっています。

 昨年までなら数時間デモ隊に暴れさせてからペッパー弾で追い払い、しつこく夜まで居残る人を逮捕、と一日仕事をしていました。

 コロナ空けからは、当初からでも開催予定地に大勢の警官を配備し、抗議活動が始まるとすぐに逮捕するようになりました。なので、デモ活動が終わる時間が早くなり、逮捕者数が増えました。

 明確に、警察の方針が変わったことを感じます。

 

 報道とのギャップは、抗議活動をする人を「香港市民」と呼ぶ点に尽きます。

 「香港市民」vs「中国・香港政府」こんな単純な話なら、簡単に理解できるでしょう。

 しかし現実は単純ではありません。虚実、真偽、善悪、光と影が、ぐちゃぐちゃに入り乱れています。見る角度によって、理解がまるで変ってしまう混沌の中にあるのが現実です。

 

 

【金融システムについて】

 中国の香港に対する強い態度に対して、アメリカも強い反発を見せています。

 ポンペオ国務長官が、香港への特別待遇の見直しや、香港ドルと米ドルとの決済停止に触れて、圧力をかけています。

 市場は香港ドルの暴落を恐れて、米ドルへの換金やシンガポール等への資金流出が急増している、と言われています。

 

 しかし、現実は異なります。

 香港ドルはむしろ米ドルに対して強くなり、上限である7.75HK㌦に貼り付いています。ここ1ヶ月、香港市場がIPOで活況のため、香港ドルの需要が増えたためでしょうか。香港政府は通貨高を抑えるために、市場介入をしたようです。

 資金流出も起きていません。(手元に資料がなく定量的に証明できずすいません)

 報道では、シンガポール側でも香港からの資金流入はないとコメントされていました。

 

 香港ドルの米ドルペッグ制は、何か二国間で法律がある訳でもなく、一方的に香港サイドのオペレーションで維持しているものなので、アメリカ側にこれを破棄する権限はありません。決済制限は可能ですが、アメリカ経済への反動も大きく(アメリカは香港で大きな利潤を得ています)、世界経済へのインパクトも甚大で、とてもこれは実行されないでしょう。(金融の現場では核兵器オプションと言われているそうです)

 

 金融センターとしての香港の地位は、まだまだ安泰です。

 シンガポールや東京が本気で奪いに来ても、世界第二位の中国経済へのアクセスの有利性が揺らぐ訳もなく、奪還は難しそうです。

 

以上が現時点で私が認識ている香港のリアルになります。

より突っ込んで書くと政治的な問題になるので、事実をベースにした範囲としています。

 

経済の栄える自由な香港となるよう祈りつつ、様子を伺い続けます。